生活困窮者自立支援制度を利用して、課題が改善に向かった事例をご紹介します。
厚生労働省の「制度紹介リーフレット」からご紹介します。
ケース1
長期引きこもりのケース Aさん(38歳男性)
Aさんは、両親と3人暮らし、高校を中退後、一時アルバイトを経験したもののすぐに辞めて家に引きこもるようになりました。父親(80歳)は、無口で、とても厳格な性格で、母親(78歳)は、もともと病気がちで足腰も弱いものの、身の回りのことはある程度対応可能です。父親の厚生年金が家計の中心になっており、母親が管理しています。
社会参加から就労へ
私(Aさん)は、高校を中退後、アルバイトをしていましたが、アルバイト先でのトラブルで辞めてからは、母親を介護することで、自分の役割がここにあると思うようになり、特に就職する可能性を感じなくなってしまいました。しかし、支援員と何度も話すうちに、近くにある「男性介護者の会」に興味が湧いてきました。試しに行ってみたところ、互いの苦労をねぎらい、自分の存在を認めてもらう仲間に出会うことができ、やがて一緒に活動するようになりました。徐々に自信を取り戻し、今度は支援員に、ひきこもりの人などに理解のある飲食店を紹介してもらい、働き始めました。始めは、環境に慣れずに休みがちしたが、職場の理解も得ながら徐々に休みも減りました。母親の介護は介護保険を申請し、ヘルパーさんに来てもらっており、今では充実した毎日を送っています。
ケース2
求職者への支援のケース Bさん(26歳男性)
Bさんは、高校時代にいじめに遭い、同年齢の人間関係を避けがちになりました。そのようなこともあり、県外の専門学校に進学し、卒業後は、飲食店に住み込み就労しました。しかし、職場でのトラブルをきっかけに、職場を無断で休みがちになり、解雇されてしまいました。その後も就職に結びつかず、求職活動も途切れるようになってしまいました。
住宅確保給付金と就労訓練事業による支援
私(Bさん)は、貯金が少なくなり、このままではアパートを出ていかねばならず、切迫した状況にありました。支援員からは、まずは安定した住居を確保する必要があるということで、住居確保給付金の制度の説明を受け、給付の決定を受けることができました。就労については、私には調理スキルがあったことから、飲食業での就労を望みましたが、焦らず時間をかけて立て直すことが大事だと考え、生活リズムを整え、対人スキルを身につけることを短期目標とし、就労訓練事業の非雇用型として高齢者施設に通うことになりました。始めは利用者とのコミュニケーションに苦労しましたが、訓練を受けた結果、非雇用型から雇用型に切り替わりました。今では、人の役に立ちたいという思いから、ヘルパー資格を取るべく準備を進めています。
ケース3
貧困の連鎖防止のケース Cさん(47歳男性)
Cさんは、妻と娘の3人暮らし。飲食店を経営していましたが、不況のため廃業に追い込まれました。妻(46歳)は、夫が仕事を失って以来、家計を支える役割を担うようになりました。現在はパートを3つ掛け持ちしています。長女(14歳、中学校2年生)は、中学入学後、勉強についていけなくなり、学校を休みがちとなりました。夜遊びも増えました。
本人だけでなく、家族も含めた包括的な支援
私(Cさん)は、飲食店を倒産に追い込んでしまったことで、完全に自信を失い悲観的になっていましたが、働きたいという気持ちは持ち続けていました。支援員と話すうちに、飲食店を経営した経験があるということは自分にとっての強みであると前向きに考えられるようになり、支援員の支援もあり、調理補助の正社員として就職することができました。私が仕事を開始したことで、妻はパートを1つに減らすことができ、生活に余裕ができたことで、家族に対しても優しく接することが出来るようになりました。長女と一緒に過ごす時間を持つことができるようになったことで、長女の生活習慣が改善されていきました。また、長女は学習支援に通うことで、高校に進学して、将来やりたいことを見つけたいと考えるようになり、担任教員の協力のもと、今では学校にも通えるようになりました。
ケース4
緊急支援のケース Dさん(32歳女性)
Dさんは、IT関連会社に正社員として就職しましたが、業績悪化によりリストラされました。その後、非正規でIT関連の仕事を続けてきましたが、解雇され、仕事先を半年間探したものの全く見つからず、貯金も底をついたため、アパートを追い出されます。郷里に戻ることも考えましたが、既に妹が結婚し、家を継いでいることから、東京で頑張ることを決意します。
他制度を利用した複合的な支援
私(Dさん)は、健康状態が気になっていたものの、健康保険料を払っておらず、無保険状態であったため通院できませんでした。便潜血があり、3日間も何も食べていないということを支援員に相談すると、緊急性があると判断され、生活保護の申請を行うとともに、一時生活支援事業を利用することになりました。1週間後に、生活保護の決定(医療扶助)があり、通院することができました。その後は、一時生活支援事業が利用できる3ヶ月間に、就労ができるような健康状態に回復するまで支援してもらい、回復してからアルバイトを探して、貯蓄することを目標にしました。その結果、一時生活支援事業の支援期間終了と同時にアルバイト先に採用されることになり、生活保護(医療扶助)は廃止となりました。今では職場にも慣れ、生活も安定しています。